生産者と再生的農業についてオンライン学習会を開きました

生産者と再生的農業についてオンライン学習会を開きました

みなさんこんにちは。

This Side Up Japan代表の藤城です。

カッピング会にご参加していただいた方はご存知かと思いますが、この度6月23日〜25日にイタリアで開催されるWorld Coffee Event に参加してきます。

そしてその前日にはThis Side Up初となる提携している生産地の代表が一同に介するThis Side Up Producers Cross Overが開催されます。TSUチームはそれぞれの生産地に足を運び、現地の人々と触れ合い、提携農園を増やしてきましたが、実はそれぞれの農園の生産者同士はあまり交流がまだありません。

しかし、TSUの理念である生産者から消費者までがオープンでフェアな関係を築くためにはスモールチームを作ることが不可欠であり、それは生産者同士のスモールチームも含まれています。

そこで、今回ほぼ全ての生産者がイタリアに集まり、それぞれの状況や生産方法などを意見交換し、みんなで知見を深めようという会が開かれることになりました。

そして、コロナ禍に始まったThis Side Up Japanもまだ農園には行けていませんが、ひとまずは生産者みんなと会って話がしたい!という思いを告げると、もちろん参加するべきだと招待され、僕も行くことになりました。

 

TSU Virtual Crossover

しかし集まれる時間は限られていて、1日しかありません。
その1日を有意義にするためにも、今回の議論の主題でもある"Regenerative Agriculture"について知識をキャリブレーションしておこうということになり、先日ZOOM上で全員参加のプレゼンテーションが行われました。

オランダ時間で16時から開催されたこの会は、日本時間にして夜23時スタートとなりましたが、アジア以外の国々は時差的にも問題なく、多くの生産者が参加することができました。

まず今回のイタリアで話し合う主題である"Regenerarive Agriculture"ですが、日本語に訳すと再生的農業となります。では一体それはなにを指しているのでしょうか。

 

前提

まず前提として、コーヒー生産者は日々の生計を立てるためにコーヒーを育てています。いくら環境に配慮したくても、売り上げが落ちて生計がたてられなくなれば、コーヒー生産自体ができなくなってしまいます。

それではどのようにして売り上げを伸ばすかという点を考えた際に、現代ではこれまでのコーヒー生産の薄利多売モデルではなく、クオリティをあげ、商品単価をあげることが重要です。そしてクオリティを上げるためには、土壌の質を上げることが重要だとされています。

ではどのようにして土壌の質を上げるのか。TSUチームは生産者と協力してその方法を長年探ってきました。

 

視野を広げる

土壌の質を上げることを考える際に、視野を広げてみるとこれはコーヒー栽培に限らず全ての農作物に通ずることがわかります。

僕たちが普段食べている野菜や肉も土壌が良くないと美味しく育てることは難しいです。つまりは人間は土壌に対して依存関係があるとも言えるでしょう。

このように考えると、コーヒー栽培という観点から土壌の再生システムを整えることに意識をシフトすることが重要だとレナートは語っていました。そして整った土壌からコーヒー栽培を行う際に恩恵を享受するというわけです。

そして今までは、土壌を農薬や殺虫剤などで人間がコントロールしていましたが、本来はそのようなコントロールは不要であり、土壌そのものの自然な状態を信頼するべきだとも語っています。

なんだか哲学的な話に聞こえてきますが、本来の自然な状態はこのような成り立ちでも十分に維持できるはずです。

 

再生的農業

では再生的農業に話を戻しましょう。
再生的農業の定義は、土壌における生命を再生する農業方法です。

この方法は、機能的生物多様性と自然な肥料を用いて、土壌そのものが作物に栄養を与えながら再生していく唯一の方法です。

 

課題

再生的農業を知るとメリットが多く感じますが、そこにはもちろん課題もあります。理想的な方法ですが、課題を解決しないことには世界的な転換を望むことはできません。

一つ目の課題は、再生的農業はオーガニックのような消費者観点のようなものだと捉えられやすいという点です。再生的農業とオーガニックの違いは、オーガニックは肥料を非オーガニックのものからオーガニックのものに変え、殺虫剤もオーガニックのものを使っています。これは一見自然的なものに見えますが、あくまでも人の手が多く介入されているため、本質的な再生的農業とは言えないでしょう。

次に再生的農業は転換してすぐには多くの収穫量を見込めないということです。これまで通り、人工的な肥料や殺虫剤を用いれば安定的な収穫量が見込めますが、再生的農業を初めてすぐにはこのような安定感を得ることは難しいです。続けていけばクオリティが上がり、商品単価も上がりますが最初はそれも難しいでしょう。この辺りは生産者の生活におけるリスクにも非常に関わるため、転換を難しくする大きな要因です。

3つ目は、生産者の意識の転換の難しさです。このような話を生産者たちの代表が聞いて、転換を決めようと思っても、これまでのやり方とは大きく異なるため多くの知識を必要とします。その際に続けてきた方法が使えないとなると混乱が生じ、それを統括することも大きな障害となってしまうのです。

 

土壌ファースト的な考えとは

再生的農業を行う際には、前述の通り土壌を生かすことが最優先になります。そのためには、まず土壌を傷つけることをやめなければなりません。具体的には耕運機を使用を減らし、自然な土壌の形を維持することや、化学的な要素を取り込むことをやめることが挙げられます。これらのことを続けていると、土壌は時期に乾いていきます。

次に土壌を傷つけることをやめた後は、土壌に栄養を与えなければなりません。具体的な方法としては、作物や土壌を全て太陽に晒すのではなく、シェードツリーなどを用いてある程度の日陰を作り、その部分の土のしたで虫やバクテリアなどの生態系を構成することが挙げられます。他にも年間を通して生え続けている草木を周辺に増やし、土壌に常に栄養が行くような状態を作ることが挙げられます。

そしてこれのことから分かるのは、自然のインプットが必要ということです。これまでの行われきた、土壌になるべく他の要素を入れず、作物と肥料のみで構成される農法は再生的とは言えません。虫やバクテリア、その他の木々などを同じ土地に与え、そしてそれらが光合成や繁殖を進めることによって再生的な土壌が完成します。

 

生産者に必要なこととは

再生的農業を進めていくにあたり、生産者に必要なこともいくつかあります。

1つ目はもちろん実験を繰り返すということです。再生的農業は時間が経てば経つほど変化し、成長していくため、日々の観察や収穫における味わいの変化などをよく見て、そしてなにをすればどのように変化するかという実験を繰り返し行いデータを取ることが重要です。またそれらを行い続ける好奇心も非常に重要でしょう。

また様々な方法を模索し実行するために、再生的農業に関する知識を持ち合わせているプロや同じことをしているような人たちのつながりも必要です。この点に関しては、まさにTSUが持っているスモールチームが実現できるので、どんどん情報交換を行い、世界的に再生的農業に切り替わるといいですね。

そしてより複雑化するであろう農園の管理とバリューチェーンにおける商品価値の管理も重要です。前述の通り、最初は儲からない再生的農業ですが、持続的にするためにバリューチェーンに訴えかけることが必要です。

 

バイヤーにできることとは

では逆にバイヤーにできることはなんでしょうか。TSUJもバイヤー側のなので、ここであげられることをしっかりこなして、再生的農業への転換を全力でサポートしていきたいと思いました。

一つ目は、このような背景をしっかり理解し、それに値する価値を払うことです。そして生産者の資金的問題を安定させることが重要となります。

そして次に生産者同士、またこのような農法に知見がある人をどんどん繋げることも必要です。生産者は日々の管理に忙しく、あまり外部の人と積極的に繋がる時間が多くありません。その点、バイヤーは多くの生産者と連絡を取り合っているため、コネクションが多いでしょう。そして彼らを繋げてしまえば、相乗効果が生まれるでしょう。これもまたスモールチームですね。

そしてもちろん新たなマーケットを発掘し、このような農法で作られらた豆を売ることです。そして還元し、生産者を支える。この繰り返しを行うことによって、現実的に再生的農業が実現します。

 

ではなぜ今なのか

そもそもなぜ今になって再生的農業が叫ばれているのでしょうか。

一つ目は、コーヒーだけに関わらず、食べ物やその他においてもパーマカルチャーが多く語られているからです。SDG'sなどもそうですが、最近はより環境配慮に関する情報が多く飛び交っています。それならばコーヒーにおいてもこの流れに乗らないわけにはいきません。

またTSUが大切にしている透明性という観点でも、昨今はパーマカルチャーが人気だからこそ、表面的に環境配慮しているように見せかけ、人々の購買行動を促そうとする企業もあります。正直、そんなことをしていても目先の利益が上がるだけで本質的にはなにも変わらないため、TSUは自ら生産者協力してこのような農法を確立しようとしています。

そして最後にTSUが持っている多くのスモールコミュニティは再生的農業を実現するのに非常に有効だからです。繰り返しになりますが、生産者同士の交流、そしてバイヤー、ロースターと幅広くつながっている団体はそう多くありません。しかしTSUではコミュニケーションが多く取れるため、実現もそう遅くないでしょう。

 

ひとまず、ここまで今回のVirtual Crossoverのイントロになります。
この後に、2人のエキスパートによる非常に面白い話があったのですが、今回はこの辺で失礼します。続きはまた次回で。

 

この会全体の様子がYouTubeに上がっているので、英語ですが気になる人はぜひ見て見てください。ここでは書ききれなかった事例なども上がっていてとても面白いです。

https://m.youtube.com/watch?v=sfn4LQ3Cu-A&feature=youtu.be

それではまた。

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